~ペコロスの母に会いに行く・ペコロスの母の玉手箱~

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みんなの書評 ~ペコロスの母に会いに行く・ペコロスの母の玉手箱~

ペコロスの母に会いに行く ペコロスの母の玉手箱
  • ペコロスの母に会いに行く(左)
  • 岡野 雄一 (著)/ 西日本新聞社
  • ペコロスの母の玉手箱(右)
  • 岡野 雄一 (著)/ 朝日新聞出版

自分の家族が、友だちが、
認知症になった時。
あなたは彼らを避けずに向き合うことができますか。

「認知症の方の世界を否定せず受け入れる」
頭では理解しているつもりでも、日常生活で受け入れることは容易ではありません。シーケーフーヅで栄養士として働きはじめ約12年。この職場では認知症の方と接する機会が多くあります。
話がかみ合わない。こちらの話していることを理解していただけない。本人の意思確認が必要な事項について伺いたくても話が通じず、何度も何度も話しているのに、なんでわかってもらえないのだろう…とつらくなることもありました。

そんな「つらい」「悲しい」はずの認知症について、『ぺコロスの母』では少し違って描かれています。この本は認知症の母、みつえとその息子であるこの本の著者、ぺコロスを中心とした日々の出来事を漫画で描いているのですが、なぜかそこには「かわいい」や「おかしい」、「ほのぼの」などの前向きな感情が存在するのです。

《ハゲちゃびんな息子》といったユニークに描かれるキャラクターや、吹き出しに添えられた長崎弁と素朴な画風が、 「かわいい」や「おかしい」といったイメージを作ります。でもそれ以上に、見る人にプラスの感情をあたえる要因として、ぺコロスが母親の頭の中がどうなっているかを自分なりに解釈し、優しい言葉で表現していることが大きいのだと思います。


みつえ:「今、ひろこと一緒やった。」
ぺコロス:「ひろこさんて何年か前に亡くなったね。」
みつえ:「そやったかね?」
“靄(もや)の中を母は『今、ここ』から離れて今ではないどこかへ行っていたらしい。 そして今、ここに帰ってくる。”

亡くなった人と今一緒にいたんだと言われたら、また変なことを言っていると一蹴して苛立つ人もいるでしょう。 でもぺコロスは、お母さんの頭の中がどうなっているかを前向きに考え、母は時を超えて色んな人に会い、色んな場所にいけるのだと解釈し、自分の中で納得しているのです。

ペコロスの母に会いに行く・ペコロスの母の玉手箱

この本を読み終わってしばらくして、とある80代の認知症を持つ方が「まだ子供が小学校から帰ってこないの」と私におっしゃいました。そのとき、「あぁ、この方は今、昔のご自宅にいらっしゃるんだ」と私はなんだか納得することができたのです。それから認知症の方がぼんやりされている時やすっきりとした表情の時は、この漫画のように記憶の中で昔と今を行き来なさっているのかもしれないと私も捉えるようになりました。もちろん実際に認知症の方の考えや心の中で起こっていることを把握するには、自分が認知症にならないとわかりません。でも、ぺコロスのように認知症の方の言動や行動を、彼らの周りにいる人たちがある意味自分に都合のいいように解釈して納得することで、支える人たちの心は少し軽くなり、認知症になった大事な人に向き合うことが出来ると思うのです。

認知症の方にとって幸せは、楽しかった記憶やつらかった思い出の中にこそ詰まっている。振り返る行為は決して特別なことではなく、ついさっきの出来事なんだな。私自身、そのように捉え方を変えたことで仕事の際に前より穏やかな気持ちで認知症の方と接することが出来ている気がします。また、私は認知症の方への接し方で行き詰まったスタッフに、ぺコロスの考え方を伝えるようになりました。私は一栄養士に過ぎませんが、プロの介護職員であってもはじめは認知症の方と接することに戸惑うことが多いのではないでしょうか。認知症といっても、その進行度も、症状も様々なので対応には臨機応変さが求められるはずです。ぺコロスで知ったこちら側の心の捉え方は、私たちのような多様な健康状態の方と接する福祉関係の仕事にとって、心を落ち着かせて仕事をするために必要な考え方だと思ったのです。

確かに『ぺコロスの母』で描かれることが認知症の全てというわけではありません。実際ぺコロスのように終始平静な状態で認知症に向き合うことは現実的ではないのかもしれません。しかし、この本を読んで認知症の人と接する際の気持ちの持ち方を知ることで、認知症の周りの人が心を少し軽くできるのではと思います。

認知症になってしまった大切な人に向き合うのが、会いに行くのが怖い。
認知症の方と接することに行き詰まりを感じる。
ぺコロスは、背をむけてしまったあなたの行く先を、変えてくれるかもしれません。

シーケーフーヅ 厨房チーム座談会 浅井将平

文:宿久 和美(しゅく かずみ)
シーケーフーヅ関西地区インストラクター・栄養士

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